南極の黒い訪問者

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南極の奥地で、想像を絶する美しさを持つオーロラを観測するツアーに参加した。 ガイドも同行し、万全の安全対策が施されたはずの旅だった。 しかし、ツアー三日目の夜静寂を破るように、テントのジッパーがゆっくりと、ゆっくりと開く音がした。 冷え切った夜風が吹き込む。 恐る恐る顔を上げると、闇の奥に、毛むくじゃらの何かが蠢いていた。 それは、まるで巨大なペンギンのようだった。 しかし、その姿は異様に歪んでいた。 手足は不自然に長く、頭部は異常に大きかった。 息を殺して見つめていると、それはゆっくりとこちらに手を伸ばしてきた。 その手には、鋭い爪が生えていた。 金縛りにでもあったかのように、身動き一つ取れない。 ただ、恐怖に竦み上がることしかできなかった。 奴は私の顔に手を伸ばし、その冷たい指先が頬に触れた瞬間、私は意識を失った。
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怖さを変えて作り直す