見つめる顔

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「俺、最近どうも調子が悪くてさ」 大学時代の友人、健一がぼそっと言ったのは、 夜の松屋でのことだった。 俺と健一、それともう一人、達也の三人で、 冷たいビールを飲みながら近況を話していた。 「どうしたんだよ、顔色悪いぞ」 達也が心配そうに覗き込む。 「いや、なんか、変なんだよ。 毎日同じ夢を見るんだ」 健一は、ビールのジョッキをじっと見つめている。 その目は虚ろだった。 「どんな夢だよ?」 俺が促すと、健一はゆっくりと口を開いた。 「トランプとプーチンとゼレンスキーが、 三人で俺の部屋にいるんだ。 でも、誰も何も言わない。 ただ、俺のことを見ている。それだけ」 「はは、なんだそれ。政治家がお前に何の用だよ」 達也は笑ってごまかそうとしたが、 健一の顔色はさらに悪くなった。 「それが、夢の中の俺は、 どうしようもなく恐怖を感じるんだ。 彼らが見ていると、 自分がどんどん小さくなっていくような、 消えていくような感覚になる」
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怖さを変えて作り直す

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