見つめる顔
2
「俺、最近どうも調子が悪くてさ」
大学時代の友人、健一がぼそっと言ったのは、
夜の松屋でのことだった。
俺と健一、それともう一人、達也の三人で、
冷たいビールを飲みながら近況を話していた。
「どうしたんだよ、顔色悪いぞ」
達也が心配そうに覗き込む。
「いや、なんか、変なんだよ。
毎日同じ夢を見るんだ」
健一は、ビールのジョッキをじっと見つめている。
その目は虚ろだった。
「どんな夢だよ?」
俺が促すと、健一はゆっくりと口を開いた。
「トランプとプーチンとゼレンスキーが、
三人で俺の部屋にいるんだ。
でも、誰も何も言わない。
ただ、俺のことを見ている。それだけ」
「はは、なんだそれ。政治家がお前に何の用だよ」
達也は笑ってごまかそうとしたが、
健一の顔色はさらに悪くなった。
「それが、夢の中の俺は、
どうしようもなく恐怖を感じるんだ。
彼らが見ていると、
自分がどんどん小さくなっていくような、
消えていくような感覚になる」