影踏みの誘い
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僕の親友、けざわ・ひがしは、学生時代から奇妙な都市伝説やマイナーな民俗学に傾倒していた。
卒業後、彼は「文化が大躍進するような大革命の土地」だと称される、ある過疎地の過疎集落に移住した。
そこで何をしているのか、詳しい話は滅多に聞かせてもらえなかったが、時折送られてくるSNSの投稿は、いつも不可解なものだった。
"この集落の『影踏み』、マジでヤバい。
単なる子供の遊びじゃねえ。
昼間でも、光の当たり方によっては、自分の影が妙な動きをするんだ。
数日前から、俺の影も、時々勝手に動くようになった。
触覚があるみたいに、地面を這うような、不快な感触がする"
それは、SNSでたまに見かける、ちょっと変わった友人の投稿、という範疇に収まっていた。
僕も「疲れてるんだろ? ちゃんと休めよ」と返信するくらいで、深くは気に留めていなかった。
しかし、その数週間後、けざわから長文のDMが届いた。
それは、今までの投稿とは明らかに異質な、恐怖に染まった文章だった。