移民爆弾

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僕の祖父は、昔、広島市に住んでいた。 原爆が投下された時、彼はまだ子供で、被爆体験は家族の誰もが語りたがらない、重い沈黙の向こう側にあるものだった。 それでも、祖父が晩年、時折ぽつりと漏らす言葉があった。 「あの時、何かが、地面から湧いてきたんだ」 それは、原爆の熱線でも、爆風でもなく、もっと静かで、陰湿な何かだったと。 祖父はそれを「移民爆弾」と呼んでいた。 原爆投下という、国が仕掛けた巨大な「移民」によって、土地に染み付いた、あるいは呼び覚まされた、見えない「何か」だと。
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怖さを変えて作り直す

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