「あのさ、またお願いがあるんだけど」
妻のサヤカは、リビングのソファに座りながら、まるで天気の話でもするかのように気軽に言った。僕の隣に置いてあった、古びたデベソの形をした陶器の貯金箱を指差しながら。
その貯金箱は、彼女が小さい頃から持っていたらしく、中途半端に膨らんだ腹部がやけに目立つ、愛玩物だった。
「また、あの趣味の資金か」
僕はため息をついた。サヤカが最近ハマっているのは、あるカルト的な音楽ムーブメント、かつて世界的に有名になった「アラン・ウォーカー」というDJを異常なまでに崇拝する、極めてニッチな集団だ。