股間のポニョ
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僕の弟は、絵を描くのが趣味だった。
といっても、真剣な画家というわけではなく、暇さえあればアトリエに籠って、気まぐれにキャンバスに向かう、そんな感じだ。
奴の描く絵は、どれもこれも奇妙なものばかりで、僕には理解できる代物ではなかった。
歪んだ顔の人物、ありえない色彩の風景、そして、なぜかいつも、絵の片隅に描かれる、奇妙なキャラクター。
「これ、なんていうキャラクターなの?」
ある日、弟の新作を見せてもらった。
それは、薄暗いアトリエの片隅に置かれた、古びた絵馬のようなものだった。
表面には、薄茶色の、なんだか妙に生々しい質感の物体が描かれている。
それが何なのか、どうしても理解できなかった。
「これ? 『股間のポニョ』だよ」
弟はあっけらかんと言った。
股間の、ポニョ?
意味が分からない。
でも、その絵には妙な吸引力があった。
ぼんやりと見つめていると、絵の具の奥から、蠢くような気配を感じる気がした。