混声

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深夜、俺は一人で「ウィアー・ザ・ワールド」を流しっぱなしにしていた。 あの、有名なチャリティソングだ。 子供たちが手を取り合って歌う姿が、なぜか妙に心をかき乱す。 歌詞の「We are the world, we are the children」というフレーズが、普段なら勇気を与えてくれるはずなのに、今日はひどく空虚に響いた。 どうしてだろう。 昨夜、SNSで奇妙な広告を見たせいかもしれない。 「伝説の歌手、〇〇(伏せ字)が10年ぶりに限定復活!」というものだった。 〇〇といえば、かつて社会現象を巻き起こした、あのカリスマ歌手だ。 しかし、復活コンサートの告知のはずが、その文面は「魂の解放」とか「真実への招待」とか、不穏な言葉ばかりだった。 俺はそれを悪質なフェイク広告だと思ってすぐに閉じたはずなのに、なぜかその歌手の名前が頭から離れない。 テレビの画面に映る子供たちの顔が、だんだんとあの歌手の面影を帯びてくるような気がした。 いや、気のせいだ。 疲れているだけだ。 そう思って音量を下げようとした、その時だった。
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怖さを変えて作り直す

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