8時、マンデルブロー集合
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先日、大学時代の友人で、最近は専ら「宇宙考古学」なる分野を独自に研究しているというゼカリア・シッチン氏と久しぶりに会った。
彼は熱心に、人類の起源や古代文明について、我々の知る歴史とは全く異なる壮大な物語を語ってくれた。
その中でも特に奇妙だったのが、彼が最近発見したという「8時だよマンデルブロー集合!」と書かれた古びたVHSテープの話だ。
曰く、それは古代メソポタミアの遺跡から発掘されたもので、古代言語で「集合せよ」という意味を持つ「マンデルブロー」と、「特定時刻」を示す数字が記されているという。
「まさか、これが現代の我々が使う『集合』という言葉と、我々の知る『8時』という時間と結びつくとはね。
しかも、この『マンデルブロー』、フラクタルの集合体としても有名だろ? 深淵な意味があるはずなんだ」
彼はそう言って、そのVHSテープの映像の一部をスマホで見せてくれた。
画面には、ノイズ混じりの荒い映像で、見慣れない幾何学模様が延々と映し出されていた。
しかし、ある瞬間、その模様が急激に回転し始め、まるで万華鏡を覗いているかのような、目眩がするような光景に変わったのだ。
そして、その中心から、耳をつんざくような金属音と共に、奇妙な「声」が響いた。
「...コ...ン...ニチ...ワ...」
「この声、なんだか聞いたことがあるような…」
「それがだ、このテープの奇妙なところは、再生するたびに映像や音声が微妙に変化するんだ。
そして、この『8時』という時間になると、必ずこの声が聞こえる。
どうやら、このテープは、我々が認識している時間軸とは別の、何らかの『窓』を開けるための装置らしい」
友人は、まるで子供のように目を輝かせながら、このテープを解析することに没頭していた。