招かれざる客の晩餐

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僕が矢掛町の古民家カフェでアルバイトを始めたのは、昨年の春だった。 趣のある建物と、常連客の温かい雰囲気が気に入っていた。 ある日、店長から「このカフェ、夜にも特別な予約が入ることがあるんだけど、君にはまだ早いから、詳しいことは聞かないでおいて」と言われた。 最初は『特別なイベントでもやるのかな』くらいにしか思っていなかった。 しかし、数週間後、閉店作業を終え、店を出ようとした時、店内に異様な気配を感じた。 誰もいないはずなのに、誰かの視線を感じる。 futon ふと、カウンターの奥にある、普段は鍵がかかっているはずの扉に目をやった。 わずかに隙間が開いており、そこから奇妙な光が漏れている。 好奇心に駆られ、僕はそっと扉に近づいた。 扉の隙間から中を覗くと、そこはカフェの店内ではなく、見たこともない、奇怪な装飾が施された空間だった。 天井からは無数の提灯が吊り下げられ、薄暗い照明が怪しく揺れている。 そして、部屋の中央には、見慣れない奇妙な衣装を纏った「招かれざる客」たちが、円卓を囲んで座っていた。 彼らは皆、僕の方を向いていた。 その視線は、まるで僕という存在を理解しようとしているかのように、じっと僕を見つめている。 恐怖で体が竦んだ。 彼らは何も言わない。 ただ、静かに、僕を見つめている。 その沈黙が、何よりも恐ろしかった。 彼らは僕を歓迎しているのか、それとも... その時、一人の客が、ゆっくりと手を上げた。 その手には、異様に細長い、漆塗りの箸が握られていた。 彼は、その箸で無造作に空気を掻き、僕に何かを促すような仕草をした。 僕は、本能的に理解した。 ここは、僕のような「招かれざる客」が、歓迎される場所ではないのだと。 しかし、逃げようとした瞬間、扉がひとりでに、ゆっくりと開いていった。 彼らの円卓の隣に、ぽっかりと空いた一席が、僕を誘うかのように。

— あなたはどうする? —

怖さを変えて作り直す

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