10人乗りミニバン
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大学時代の友人の送別会。
久々に集まった7人。
会場へ向かうため、幹事が用意してくれたのは
10人乗りのミニバン。
助手席に座ったのは、昔から少し変わった趣味を持つ
タケシ。
「なぁ、これ、ちょっと気になるんだけど」
タケシが指差したのは、運転席の後ろ、
2列目の真ん中の席。
そこだけ、シートの色が妙に
鮮やかな赤みを帯びている。
「え、何これ。張り替えた?」
「いや、俺もそう思ったんだけど、
他の席と生地が全然違うんだよ。
なんか…生っぽいというか」
そう言われてみると、確かにその席だけ、
布地の繊維が湿っているような、
生々しい気配がする。
皆で顔を見合わせたが、誰かがいたずらで
やったとも思えず、
気味悪く思いながらも、
特に気にせず座ることにした。