ウクライナの残響
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「お兄ちゃん、これ、見て。
変なの」
妹がスマホを突きつけてきた。
画面には、見慣れないSNSアカウントの投稿が表示されている。
「ウクライナの最前線」と名乗るそのアカウントは、
連日、砲撃の轟音や瓦礫の山、
疲弊した兵士たちの顔写真を無造作にアップロードしていた。
「なんやねん、これ。
また戦争ごっこか?」
「ううん、なんか違うんだよね。
この人、いつも同じ場所から撮ってるみたいで。
ほら、この廃墟、前も見たことある」
妹の言う通り、投稿される写真には、
特徴的な崩れ方をしたコンクリートの建物が繰り返し映っていた。
そこに写る兵士たちは、誰一人として顔を上げず、
ひたすら虚空を見つめているように見える。
そして、どの写真にも、画面の隅にぼんやりと、
しかし確かに、ある「もの」が写り込んでいるのだ。