澱みの底の誘い
1
「マジで、なんでこんなところにいるんだよ、俺…」
スマートフォンの画面が、河川敷の橋の下という薄暗い現実にぴんと張り付いた。
GPSが狂ったのか、それとも俺の頭がおかしくなったのか。
昨夜、渋谷のクラブで出会った「ニューヨークシティボーイ」なんて自称する男に、「面白い場所がある」と連れてこられたのがここだった。
都会の喧騒からは遠く、ただ淀んだ川の匂いと、アスファルトのひび割れだけが視界に広がる。
あいつは「ちょっと先まで様子見に行く」と言って、もう30分以上戻ってこない。
連絡しようにも、電波はかろうじて届く程度で、SNSの通知すらまともに来ない。