焼肉屋の惨劇
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「ごめん、遅くなった!」
慌てた様子の妹が、予約時間の15分も後に焼肉屋に飛び込んできた。
いつものことだけど、今日はなんだか様子がおかしい。
顔色が悪いっていうか、目が虚ろ。
「大丈夫?顔色悪いよ」
「う、うん、大丈夫。ちょっと寝不足なだけ」
そう言って席に着いた妹は、メニューを見ながらも上の空だ。
対照的に、私の方は今日のデートに鼻息を荒くしていた。
だって、相手は憧れの先輩なんだもん。
しかも、後輩だっていう妹も一緒に、三人で食事するって、もう最高じゃん。
「私、このタン塩、絶対頼む!」
「私はハラミとカルビかなー」
先輩がメニューを指差しながら話しかけてくれた。
ドキドキして、うまく言葉が出てこない。
「先輩、あの…」
「どうしたの?」
「…えっと、おすすめとかありますか?」
「そうだね、ここの厚切りロースは絶品だよ。あと、このユッケも美味しいって評判だね」
先輩の笑顔に、心臓が早鐘を打つ。
横を見ると、妹が冷たい視線で先輩をじっと見つめていた。
なんか、嫌な予感がする。