産婦人科の子供
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産婦人科の子供
数年前、
妻が里帰り出産した時の話だ。
俺は一人暮らしになった自宅で、
夜な夜なゲームをするか、
オンラインで愚痴をこぼすだけの生活を送っていた。
そんなある日、
妻から「陣痛が来たから、そっちに帰るね」と連絡があった。
俺は急いで病院に駆けつけた。
夜の産婦人科は、
昼間とは打って変わってひっそりとしていた。
廊下を歩いていると、
どこからか子供の声が聞こえてくる。
最初は気のせいかと思ったが、
よく聞くと「タバコ、ちょーだい」と繰り返している。
子供の声にしては、
妙に乾いた、舌足らずな響きだった。
「どこの子だろう?」