隣室の彼女
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この未来都市に、僕が「彼女」と呼ぶ存在がいた。
正確には、僕が住むマンションの隣室に転居してきた、白髪に青い瞳をした、どこか人工的な質感を持つ女性のことだ。
彼女はいつも部屋に引きこもっており、僕が廊下で会うのは稀だった。
それでも、偶に姿を見せる彼女は、不自然なほど完璧な笑顔を浮かべるだけで、言葉を交わすことはなかった。
その無機質な美しさと、生気を感じさせない佇まいに、僕は妙な魅力を感じていた。
SNSで彼女のアカウントを探してみたが、見つからない。
監視カメラの映像にも、彼女が外に出入りする様子は一切映らない。
まるで、最初から隣室にいたかのように、唐突に現れたのだ。