コウモリ缶の呪い
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数年前、僕がまだ大学に通っていた頃の話だ。
安月給ながらも、なんとか一人暮らしをしていた。
ある夏の日、近所の「さかな○ン」というスーパーで、妙なものを見つけた。
それは、パックに入った「キクガシラコウモリ」と書かれた缶詰だった。
確かに、パックに詰まっているのは、紛れもなくコウモリの干物のようなものだ。
だが、ラベルには「高級珍味」「栄養満点」と書かれており、妙に購買意欲をそそられた。
値段も手頃だったし、好奇心には勝てなかった。
家に持ち帰り、恐る恐る開封してみる。
鼻につくのは、獣とも形容しがたい、独特のアンモニア臭。
しかし、それ以上に気になったのは、缶詰の底に沈んでいた、黒く粘り気のある液体だった。
まるで、凝固した血液のようにも見える。
恐る恐る、その液体を指に少量取ってみた。
冷たい。
そして、指先がピリピリと痺れるような感覚。
まるで、静電気に触れた時のような、不快な痺れだった。
「なんだこれ…」