万博公園の賭け
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最近、どうも調子がおかしい。
いや、おかしいのは俺の方じゃなくて、この「万博記念公園」って場所だ。
子供の頃、親に連れられて来た記憶はぼんやりとある。
あの太陽の塔、子供心に不気味で、でも妙に惹きつけられた。
今回、旧友の「賭博人」と久しぶりに会う約束をしたのが、よりにもよってここだった。
彼は昔から変わらず、どこでどう儲けているのか分からないが、いつもふらりと現れては、奇妙な話を聞かせてくれた。
「おい、お前、最近『運』が向いてないだろ?」
会うなり、奴はニヤリと笑ってそう言った。
確かに、ここ数ヶ月、パチンコは負け続きだし、競馬でも大穴は当たらない。
「なんで分かったんだよ?」
「顔に書いてあるわ。まあ、そんなお前には、とっておきの『仕掛け』があるんだ」
奴はそう言って、俺の手に何かを握らせた。
それは、乾いた金属の感触。
見れば、掌に収まるほどの、奇妙な紋様が刻まれたコインだった。
古銭のようでもあり、何かの記号のようでもある。
「これを持っておけ。
今日の『収穫』だ。
だが、使い方を間違えると、ただのガラクタになる。
いや、ガラクタ以下になるかもしれないな」
奴はそう言うと、俺に背を向け、人混みに紛れて消えていった。
まるで最初からいなかったかのように。
残された俺は、そのコインを握りしめ、一人、公園を散策していた。
太陽の塔の巨大な存在感に、ただただ圧倒される。
すると、ふと、コインが微かに熱を帯びていることに気づいた。
そして、頭の中に、直接語りかけてくるような声が響いた。
『ここには、古きものと新しきものが混在する。
お前は、どちらを選ぶ?』
声は、コインから発せられているようだった。
いや、コインを通して、この広大な空間のどこかから。
その時、足元に目をやると、地面に奇妙な円形の模様が浮かび上がっているのが見えた。
それは、コインの紋様と酷似していた。
どうやら、この模様の上でコインを掲げると、何かが起こるらしい。
太陽の塔が、こちらをじっと見つめているような気がした。
— あなたはどうする? —