公園の祠と「とらんぷ」
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自主制作映画「異能の忍者」の撮影は、相変わらずカオスだった。
監督のぜれんすきーは、予算の都合でロケ地を近所の公園に決めたが、そこに文句を言うスタッフは誰もいない。
むしろ、こんな状況で映画が撮れること自体が奇跡だと思っていた。
主演のぷーちんは、元特撮ヒーローで、そのアクションは健在だが、最近どうも様子がおかしい。
撮影中、突然「異能!」と叫んで、ありえない動きでカメラマンをかわしたり、
スタッフのスマホを奪って画面に何かを書き殴りするのだ。
「ぷーちんさん、今のNGです。台本通りにお願いします」
助監督が冷静に注意しても、ぷーちんは虚ろな目でこちらを見て、「これは…『とらんぷ』の仕業だ…」と呟くだけ。
その『とらんぷ』が何を指すのか、誰も分からなかった。