バッテンリップの囁き

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「バッテンリップでごぜえます」 ――それが、彼女の唯一の言葉だった。 俺は、死体安置所の夜勤アルバイトとして採用されたばかり。 薄暗い廊下。 薬品と腐敗臭が混じり合った独特の匂い。 そして、あの部屋。 まだ名前もわからない、身元不明の遺体が安置されている場所だ。 俺が担当になったのは、3号室
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怖さを変えて作り直す