タラコ・パフォーマー
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タラコパフォーマー
僕が「タラコパフォーマー」と呼ばれるようになったのは、あれがきっかけだった。
いや、正確には、あれを目撃してからだ。
始まりは、SNSで流れてきた奇妙な動画だった。
場所は、地方の寂れた遊園地、いや、今はもう廃墟同然の「タラコ牧場」跡地。
そこに、全身を真紅の塗料で覆い、顔にはタラコの形をした奇妙なマスクをつけた男がいた。
彼は、ただひたすらに、タラコのように口を「たらこー」と開閉し続けるパフォーマンスをしていた。
シュールすぎて、一瞬で拡散され、すぐに「タラコパフォーマー」と名付けられた。
僕も最初は「なんだこれ?」と笑ってみていた。
だが、その動画には、どこか異様な熱量があった。
背景に映り込む、錆びついた観覧車や、雑草に覆われた広場。
そこにいるタラコパフォーマーは、まるでその荒廃した場所そのものから生まれた存在のように見えた。
コメント欄には、「不気味」「怖い」という意見も多かったが、それ以上に、「なんかクセになる」「続きが見たい」という声も目立った。