記録される空き地

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ねえ、タケル、あれ、まだ動いてるってマジ? 僕、タケル(小4)は、親友のユウキにそう言われ、空き地にあった古い遊具の方をちらりと見た。 錆びついたブランコが、微風もないのに、カタン、と短く音を立てた気がした。 夏休みも終わりに近づき、僕らは毎日、通学路の脇にある使われなくなった市立D小学校の校庭跡地で遊んでいた。 建物はもう数年前に取り壊され、今は芝生と、なぜか撤去されずに残された、奇妙な形の鉄棒と、このブランコだけが残っている。 「気のせいだよ。ユウキこそ、またあの『見ちゃいけないものリスト』のことでも考えてるんだろ」 ユウキがいつも言う「見ちゃいけないものリスト」とは、この校庭跡地に関する、地域で囁かれる奇妙な噂の総称だ。 僕らは噂を信じていないふりをしていたが、この場所には確かに奇妙な違和感があった。 例えば、誰もいないのに、夏になっても雑草が生えない一円玉くらいの小さな円。 あるいは、夕方になると、遠くの教室から聞こえてくるような、人の気配のない、しかし確実に「カチャ」と鳴るロッカーの音。
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怖さを変えて作り直す

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