夜の魔物
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「マジありえないんだけど!」
スマホの画面を食い入るように見つめるのは、俺の大学時代のサークルの後輩、アヤカだ。
爆乳ドスケベ黒ギャル、なんて自称してたけど、俺から見ればただの可愛い後輩。
夜の繁華街で飲んだ帰りに、いつものように駅まで送るのが俺の役目だった。
「何?また変なDM?」
「ちがうの!これ見てよ!」
アヤカが俺に突きつけたのは、見慣れないSNSの投稿だった。
画像は、暗闇にぼんやりと浮かぶ夜の繁華街の風景。
写っているのは、数人の男女と、それらを遠巻きに見ている、影のような人物が数人。
そして、その中心にいたのは、見間違えるはずもない、アヤカの姿だった。
「は?俺たち、こんな写真撮ったっけ?」
「撮ってない!てか、これ、誰かが撮って、勝手にアップしてるわけじゃん?」
投稿には「#夜の魔物」「#跟踪者」「#逃げられない」なんてハッシュタグがついていた。
コメント欄は、「怖すぎる」「これ、私かも」「誰なの?」といった書き込みで埋め尽くされている。
「マジでキモいんだけど!誰よ、こんな写真撮ってんの!」
アヤカは怒りを通り越して、怯えているようだった。
「まあ、誰かの悪質ないent#いたずらだろ。そんな気にするなよ」
俺は努めて冷静に言ったが、正直、背筋が寒くなった。
写真に写っている「影のような人物」が、妙にこちらに視線を感じさせるような構図だったからだ。
まるで、俺たちが今まさに、その人物に見られているかのような。