夜の魔物

1
「マジありえないんだけど!」 スマホの画面を食い入るように見つめるのは、俺の大学時代のサークルの後輩、アヤカだ。 爆乳ドスケベ黒ギャル、なんて自称してたけど、俺から見ればただの可愛い後輩。 夜の繁華街で飲んだ帰りに、いつものように駅まで送るのが俺の役目だった。 「何?また変なDM?」 「ちがうの!これ見てよ!」 アヤカが俺に突きつけたのは、見慣れないSNSの投稿だった。 画像は、暗闇にぼんやりと浮かぶ夜の繁華街の風景。 写っているのは、数人の男女と、それらを遠巻きに見ている、影のような人物が数人。 そして、その中心にいたのは、見間違えるはずもない、アヤカの姿だった。 「は?俺たち、こんな写真撮ったっけ?」 「撮ってない!てか、これ、誰かが撮って、勝手にアップしてるわけじゃん?」 投稿には「#夜の魔物」「#跟踪者」「#逃げられない」なんてハッシュタグがついていた。 コメント欄は、「怖すぎる」「これ、私かも」「誰なの?」といった書き込みで埋め尽くされている。 「マジでキモいんだけど!誰よ、こんな写真撮ってんの!」 アヤカは怒りを通り越して、怯えているようだった。 「まあ、誰かの悪質ないent#いたずらだろ。そんな気にするなよ」 俺は努めて冷静に言ったが、正直、背筋が寒くなった。 写真に写っている「影のような人物」が、妙にこちらに視線を感じさせるような構図だったからだ。 まるで、俺たちが今まさに、その人物に見られているかのような。
1 / 6

怖さを変えて作り直す

新着の物語