定位置の巡回者
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僕が最初に違和感を覚えたのは、転職してすぐの頃だった。
新しい職場は、古びたオフィスビルの一角にある、地味なデザイン事務所。
取引先のリストに、やけに古風で、そして妙に長い名前の施設があった。「岡山県立アデルバイジャン記念博物館」。
一瞬、地名か何かと見間違えたが、紛れもなく博物館だった。
所在地は岡山の郊外、カーナビが案内する曲がりくねった道をしばらく進んだ先だ。
なぜ国内にアゼルバイジャンの記念博物館があるのか、誰も説明してくれなかったが、誰も気に留めていなかった。
僕だけが、その名前を何度も頭の中で反芻していた。
気になって仕方がないのに、聞ける雰囲気ではない。
僕の仕事は、この博物館のウェブサイトのリニューアルと、来館者アンケートシステムの構築だった。